【北欧デザイン③】北欧のスタートアップ5選。「利用者の感情を設計する」デザイン理念について|Lovable・reMarkable・Oura・Snøhetta・1X Technologies
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「北欧デザインの理念は、ビジネスや企業の在り方にも見られますか?」
🐾この記事でわかること
- 北欧発スタートアップ5社に共通するデザイン理念の具体的な内容
- ソフトウェア・紙タブレット・ウェアラブル・建築・ロボットという異なる領域に同じ思想が宿る理由

前の記事で、ガジェットとか建築の話が出てきたけど、最近のスタートアップのプロジェクトにも北欧らしいコンセプトを感じる事例ってあるんかな?

調べてみたわ。何を目指して作るか、誰のために作るか、という問いの解像度の高さを見ていきたいわね。
理念を通じて見る、北欧デザインの本質
北欧デザイン①の記事では、北欧デザインが生まれた背景を、前回の北欧デザイン②では具体的なプロダクトを紹介してきました。本記事では、その理念が現代のスタートアップにどう息づいているかを5社を通じて掘り下げます。

比較要約表:北欧発スタートアップ5社
| 企業名 | 国 | 領域 | 北欧デザイン理念との接点 |
|---|---|---|---|
| Lovable | スウェーデン | AIソフトウェア | 誰でも作れる・民主主義的デザインの現代版 |
| reMarkable | ノルウェー | 紙タブレット | ノイズを消す・デジタルにおける余白の思想 |
| Oura | フィンランド | スマートリング | 生活に溶け込む・存在を主張しない道具 |
| Snøhetta | ノルウェー | 建築・デザイン | 人が集まる場所を設計する・空間の民主化 |
| 1X Technologies | ノルウェー | ヒューマノイドロボット | 人間を補完する道具・人間中心設計 |
① Lovable(スウェーデン):誰でも作れる。民主主義的デザインの現代版
Lovableは、2023年にストックホルムで創業したスタートアップです。アイデアを言葉で打ち込むだけで、プログラミングの知識がない人でも自分だけのウェブサービスやアプリが作れるAIツールを提供しています。

えちょっと待て。
2025年7月にシリーズAで2億ドル調達、評価額18億ドルって‥ユニコーン企業どころじゃないな。。同年12月にはシリーズBで3億3,000万ドルを調達、評価額66億ドルまで跳ね上がってる‥。やばない?

そう。ローンチからわずか数ヶ月でユニコーン達成っていうのが、ヨーロッパ史上最速レベルらしいわ。スタートアップってこういう可能性を秘めてるから好き。
従業員わずか45人で年間の経常収益(ARR)1億ドル超え、アクティブユーザー230万人という数字も、まじでAI無双してるわよね。
Lovableは「プログラミングができる人だけがデジタルのものを作れる」という従来の常識を覆すことを目指して作られており、たとえば予約管理ツールや、ポートフォリオサイト、社内の連絡ツールなど、これまで専門家に依頼しないと作れなかったものが、文章を入力するだけで形にすることが出来ます。
CEOのAnton Osikaはこう語っています。
AIを通じて、プログラミングの方法を知らない99%の人たちに、ものを作る力を届けたい。
— Anton Osika(CEO・共同創業者)
また、OsikaはアメリカのIT企業が集まるシリコンバレーへの移転を勧められながらも断ったことでも知られています。「スウェーデンに留まることが成功の理由だ」と語り、北欧の平等主義的な価値観と、チームで協力し合う文化が、Lovableの強さの源だと説明しています。

「高い機能性を持ったものを、誰でも使えるようにする」という民主主義的デザインの思想を感じますし、シリコンバレーという環境を選ばなかったことも大変に興味深いです。
② reMarkable(ノルウェー):デジタルの時代に先駆け、余白を生むデザイン
reMarkableは2013年にノルウェーの首都オスロで創業し、2017年に初代製品を発売。電子ペーパー(液晶ではなく、紙のような見た目で目が疲れにくい画面)を使った「紙のような書き心地」のタブレットを開発しています。
世界で100万台以上が販売されており、こちらもノルウェー発のユニコーン企業(評価額が1,000億円を超えるスタートアップ)のひとつです。
創業者Magnus WanbergはreMarkableというプロダクトに対し「紙は思考のための究極のツール。集中力を高め、脳を活性化し、制限や散漫さなしに自由に働き想像できる。」と語っています。さらに、公式サイトにはこう書かれています。
私たちのソフトウェアはミニマルで不要な複雑さを排除している。そうすることで、創造性と生産性のための最高のメディアの自然な延長になれる。
— reMarkable公式サイト
reMarkableスマートフォンのような通知もなく、SNSもなく、書くことだけに集中できるデバイスであり、開発のねらいはこの「一つのことに集中する時間」を提供する部分にありそうです。

便利で万能なスマホから、一部の機能を切り離す。こうしたガジェットが最近のトレンドになりつつありますよね。我々は本当は何がしたかったのか‥スマホを開くと散漫になってしまう脳の回路を、本来の目的に立ち返らせるデバイスです。
reMarkableは多機能化し続けるデジタル機器の中で、あえて「削る」選択をしたプロダクトです。これは現在のトレンドの先駆けであり、「余分なものを削ぎ落とした先に本質が見える」という北欧デザインの基本が、デバイスの設計に現れている例です。
③ Oura(フィンランド):あえて高機能性を主張しないスマートリング
Ouraは2013年にフィンランドで創業。指輪型のウェアラブルデバイス(体に身につけるセンサー搭載の電子機器)「Oura Ring」を開発しています。
Oura Ringは、睡眠の質・心拍数・体温・ストレスレベルなどを自動で計測し、AIがデータを分析して健康状態をわかりやすくアドバイスしてくれます。2026年6月には最新モデル「Oura Ring 5」を発表。従来モデルより40%小型化しながらAI機能をさらに強化しました。

スマートリングって、デバイス感けっこー出してくるからな。

たしかに、シンプルなデザインを探しても意外とない分野かもしれないわ。シンプルすぎるリングだと他と差別化がしにくいって意図もあるのかもしれないけど。。
Oura自身がその設計思想をこう説明しています。
フィンランドの緻密なクラフツマンシップから生まれたOuraの製品は、生活に溶け込む考え抜かれたデザインと先端技術を採り入れて設計されています。
— Oura公式サイト

スマートウォッチのように画面を持たず、航空機の部品にも使われる強度のチタン製のリングとして24時間つけていられます。「つけていることを忘れてしまうほど馴染む」という体験が特徴的です。北欧のデザイン理念でもあった「道具は生活空間に溶け込めるか」という問いに、最もシンプルな形で答えているプロダクトとも言えるでしょう。
Oura Ring 5は日本語アプリに対応しており、国内でも購入可能です。スマートウォッチの存在感や重さが気になる方に、おすすめですよ。
④ Snøhetta(ノルウェー):「誰のための空間か」を問い続ける建築集団
Snøhetta(スノヘッタ)は、1989年にオスロで設立された設計事務所です。建物の設計だけでなく、公園や広場などの屋外空間、インテリア、ブランドのビジュアルデザインまで幅広く手がけています。

え、NOT A HOTELとも仕事してんのか‥!

そうなの。しかも、北海道っていう気候が似てる場所でのプロジェクトなのもエモいわよね。
ノルウェー国立オペラ劇場、アレクサンドリア図書館(エジプト)、サンフランシスコ近代美術館の増築・釜山オペラハウス(韓国・2026年完成予定)など、世界各地の公共建築を手がけてきました。
ノルウェー国立オペラ劇場の屋根はなだらかな坂になっていて、チケットを持っていない人でも屋根の上を散歩できるように設計されています。「建築は特別な人が特別な場所として使うものではなく、すべての人が自然に集まれる場所であるべき」というコンセプトが体現されていますよね。

建築は、すべての人のウェルビーイング(心身の豊かさ)・文化的表現・コミュニティの関わりを育む空間を設計することを目指しています。
— Snøhetta公式サイト

建築を「公共のものにする」のもデザイン力のだと思っています。特定の誰かだけのものにならないような配慮は、設計する前から意識していないとできないこと。建築が人を招く→公共性が増す という自然な動線設計が、この建築の大きな価値ではないでしょうか。
⑤ 1X Technologies(ノルウェー):人間と共に働くロボットの設計
1X Technologiesは2014年にノルウェーで創業。人間と一緒に、安全に働くことができる人型ロボットの開発を行っています。現在、プロダクトのオーダーが公式サイトから可能となっています。
工場・施設向けの車輪型ロボット「EVE」と、家庭向けの二足歩行ロボット「NEO」の2機種を展開。2025年10月に始まったNEOの先行予約は5日間で初年度分が完売し、2026年に一般家庭への出荷が開始しています。
冒頭の動画に映っているNEOのデザインには、注目すべき点があります。
創業者のBernt Børnichが、エンジニア以外で最初に採用したのはデザイナーでした。そのデザイナーはこう語っています。
もしこのテクノロジーの世界を普通の人々と結びつけたいなら、どんな見た目になるべきか。そこから6週間でロボットを一から再設計した。
— 1Xデザイナー・Sleeper氏

NEOが活動する家や職場は、すでに人間の体に合わせて作られているますよね。だからこそ、ロボットも人間の形をとるべきという設計思想になったようでね〜。

つまり、現実の生活の中で人間と一緒に動くことを最優先に設計してる。生活の中で協力してくれる人を一人雇うような感覚だな。

あ〜だからこういう「いかにもロボット!」って動きじゃなく、柔軟さも兼ね備えた動きをするのね。目線を合わせてくれるような仕草だったり、まるで友人みたいなフレンドリーさね。
「道具は使う人の生活に自然に溶け込むべき」
「人間を置き換えるのではなく補完するものであるべき」
北欧デザイン①(参照記事)でアルヴァ・アアルトが語った「使う人の感情まで設計に含める」という思想が、ロボット工学にも引き継がれている一例です。

まとめ:5社に共通する問いとは
ジャンルも規模も全く異なるこの5社には、共通した社会的な問題提起があると筆者は感じています。たとえば、
Lovable:「どうしたら誰でも使えるツールになるのか」
Oura:「日常生活に溶け込む存在をどのように作るか」
Snøhetta:「誰でも使える場所にするにはどう設計するか」
1X Technologies:「人間と共同するにはどの要素が必要か」
問いの形は違いますが、向かっている方向は同じです。技術や機能を誇示するのではなく、人間の生活に寄り添えるかどうか。その問いは、北欧デザイン①でご紹介した、北欧の冬の長さの中から生まれた美意識やものへの価値観と、根っこでつながっているのではないでしょうか。
北欧デザインは特定の形やスタイルではありません。「この道具は、誰かの生活を少しだけ豊かにできるか」という問いを持ち続けること。それが北欧デザインの本質であり、今も更新され続けている理由だと思います。
お読みいただきありがとうございました!
