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デザイナーの雑記

【北欧デザイン⑦】雨具がファッションになる|Marimekko・Rains・Acne Studios・By Malene Birger・Tomorrow Denim|北欧5ブランドのコンセプトが教えてくれるもの

a room filled with lots of furniture and decor
mono

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🐱本日のご質問

「北欧のファッションブランドって、なんで長く着られるの?」

🐾この記事でわかること

  • 北欧を代表するファッション・テキスタイルブランド5社のデザイン哲学と変遷
  • 「流行を追わない」「機能と美しさは同じ問題」という北欧的なコンセプトががファッションにどう宿るのか
  • 各ブランドが消費者に長く支持される理由の本質
ねここ
ねここ

マリメッコって、昔からあるのに全然古くならないよな。しかもRainsに関しては雨具だよな。それがなんでやや高級めの雨具ブランドとして成立するんだ?

ねねこ
ねねこ

そうよね〜。日本でも北欧ブランドが人気の理由を考えると見えてくるのかも。北欧ブランドにしかない何か、、何かがあるのよ。

北欧デザイン①では、北欧で作られた道具が美しくあることと生活環境との関係性について掘り下げました。今回はファッションについて、5つのブランドを深掘りし、各メーカーのデザインコンセプトを見ていきます。

前回の記事はこちら
【北欧デザイン⑥】北欧の食器が一生使えるデザイン的理由。陶芸・セラミクスブランド5社のデザイン哲学|Kähler・Arabia Finland・Royal Copenhagen・Lyngby Porcelain・Iittala
【北欧デザイン⑥】北欧の食器が一生使えるデザイン的理由。陶芸・セラミクスブランド5社のデザイン哲学|Kähler・Arabia Finland・Royal Copenhagen・Lyngby Porcelain・Iittala

比較要約表:北欧ファッション・テキスタイルブランド5社

ブランド創業デザイン哲学の核心
Marimekkoフィンランド1951年大胆な柄で戦後フィンランドに喜びと自由を。「新しい生き方の提案」
Rainsデンマーク2012年雨の多い気候から生まれた「雨でもスタイリッシュに」という逆転の発想
Acne Studiosスウェーデン1996年「最大限のミニマリズム」。余白の中に反骨と知性を宿す
By Malene Birgerデンマーク2003年「longevity(長命性)を意識した設計」。時代を超える素材と仕立て
Tomorrow Denimデンマーク2018年世界初・北欧エコラベル×EUエコラベル取得デニム。美しさと倫理は両立できる

① Marimekko(マリメッコ):大胆な柄が「こうでなければ」からの解放をもたらした

Marimekkoは1951年、フィンランドのヘルシンキでアルミ・ラティアと夫のヴィリョ・ラティアが創業したテキスタイル・ファッションブランドです。2026年、創業75周年を迎えます。

ねねこ
ねねこ

そんなに歴史があるのね!マリメッコの柄を見るとすごく現代っぽいから。。

Marimekkoが生まれた1950年代のフィンランドは、第二次世界大戦の傷が癒えない時代でした。女性のファッションは地味で画一的で、衣服は体を縛るものでした。

出典:https://www.loc.gov/pictures/item/2020636028/

そこにアルミ・ラティアは大胆な色彩と有機的な柄のテキスタイルを世に出しました。
Marimekkoの公式サイトにはこう書かれています。

1950年代の女性ファッションは単色で、感動のないものがほとんどでした。服は身体的にも制限的で、スタイル的にも抑圧されていました。Marimekkoのドレスの抽象的な柄・建築的なフォルム・鮮やかな色彩は、あらゆる年齢・サイズの自由な精神を持つ女性にとって完璧なレシピだったのです。

(中略) 私たちのクリエイティブな哲学は、クリエイティブなコミュニティというアイデアに基づいています。アルミ・ラティアは、アート・建築・ファッション・デザインをまたいだコラボレーションが最も興味深いアイデアを生むと信じていました。
— Tiina Alahuhta-Kasko(Marimekko CEO)

ねここ
ねここ

この言葉からは、ものづくりの理念みたいなものが伝わってくる。「ファッションならファッションの枠組みで」とデザインの分野で限定せず、あらゆるモノのデザインから「デザインとは何か」「このデザインで何を成し遂げたいのか」に向かってものを作っている。

1960年、ジャクリーン・ケネディが大統領選挙キャンペーン中にMarimekkoのドレスを数着購入したことで、一夜にして世界的な知名度を得ました。創業75年を経た今も、ヘルシンキの本社兼テキスタイル印刷工場では芸術家・デザイナー・印刷職人が並んで働いています。

筆者
筆者

Marimekkoのデザインの本質は、新しいものを追うことにはないのですよね。新しい柄を少しずつ導入しながら、古いデザインも定期的に生産し続ける。半世紀前の柄が今のファッションに自然に溶け込む形です。過去に生み出された良質なものへのリスペクトを感じます。

② Rains(レインズ):雨の多い気候が生んだ、スタイリッシュなライフウェアという提案

Rainsは2012年、デンマーク第二の都市オーフスでフィリップ・ロトコダニエル・ブリックス・ヘッセラーゲルが創業しました。2人はともにデンマークのデザイン学校TEKOで出会い、「雨の多い気候でもスタイリッシュでいたい」という問いを出発点にブランドを立ち上げました。

ねここ
ねここ

雨の時期とか、防寒用のファッションに対して「可愛く・楽しく」のコンセプトはよく見かけるよ。だけど、かっこよさや洗練されたデザインに振ったことがポイント高いなと思う。

デンマークは年間約170日が雨天です。北欧デザインシリーズ①で触れた「冬が長く暗いから道具が美しくなった」という思想と同じコンセプトがRainsでも成り立ちそうです。

オーフスでなければならなかった。この街の気候こそがRainsを立ち上げる原動力になった。ここで耐久性を学び、それをレインウェアに応用する方法を学んだ。これが私たちのブランドの最も真実の表現だ。

a view of a city from a tall building

— Daniel Brix Hesselager(Rains共同創業者)

Rainsの代名詞ともいえる素材は、軽量で柔軟なPUコーティング素材です。PVCやDWR-PFCといった環境・健康に影響のある代替素材を意図的に使わず、PUコーティングを選んでいます。デンマークでの暮らしは雨天も多く、ほぼライフウェアとも言えるファッションアイテムに選ばれる素材と考えても適切な選択ですね。

筆者
筆者

筆者は、Rainsの12.5Lのリュックを3年ほど使っています。
雨でびしょびしょの日でも関係なく使え、縦長の収納も快適。正面だけでなく、背中側のポケットも重宝します。

2025年、Rainsはオーフスに新本社を開設しました。2025年のFW25コレクションのテーマは「Forever(永遠に)」。長持ちするシルエットと永続する丈夫な素材。Rainsの哲学は、雨の日にこそグッとくる。

③ Acne Studios(アクネ ストゥディオズ):最大限のミニマリズム

Acne Studiosは1996年、スウェーデンのストックホルムでジョニー・ヨハンソンが共同創業した、広告・映像・グラフィックデザインのクリエイティブコレクティブ(創作集団)がルーツです。2026年、創業30周年を迎えました。ACNEとは「Ambition to Create Novel Expressions(新しい表現を作る野心)」の略でした。

Acne Studiosのデザインを一言で表すなら「maximalist minimalism(最大限のミニマリズム)」です。

ねねこ
ねねこ

一方で、近年のAcne Studiosには「ブランドの軸が薄れた」という声も聞かれる。そのアンサーとして、創業者のジョニー・ヨハンソンはこんなふうに語っているの。

今日、小さなブランドであることはより難しい。販売の面で立ち上げるのがより難しくなっている。ブランドの多くが同じ人々に所有されており、そうした構造が違いを生んでいる。

(記者が「消費者がサステナビリティを重視するようになった今、それがAcne Studiosがサステナブルなファッションを作る理由なのか」と尋ねたのに対して)
正直に言うと、その観点から顧客のことはあまり気にしていません。それは私自身についてであり、私たちについてであり、誠実な仕事と良い人間であろうとすることについてです。

— ジョニー・ヨハンソン(Acne Studios創業者)

Dezeen(2025年10月14日)

つまりこれは、「顧客が望むからサステナブルにしているわけではない」のであり、顧客の需要に応えるためではなく、自分たち自身の誠実さ・倫理観のためにサステナビリティを追求している。という主張です。

同インタビューでヨハンソンは、30周年を前にブランドを「研ぎ澄ます」段階にあると語り、「より少ないものを、より良く作る」という方向性を示しています。

筆者
筆者

業界全体にも逆風が吹いています。2025年、ラグジュアリー市場全体が縮小しており、Interbrandの調査では上位ラグジュアリーブランド13社の評価額が合計5%下落しました。

一方、Acne Studios自体の財務は意外にも安定傾向。2024年の純利益は前年から135%増加し、利益率は13.2%まで改善しました。2021年から2024年の年平均成長率は8.6%で、業界平均の6〜7%をやや上回っています。

つまり「評判が変わった」という印象の背景には、ブランド側の意図的な戦略転換(顧客の声に左右されない姿勢)と、業界全体の逆風が重なっています。数字の上では、ブランドの基盤は崩れていません。

代表的なプロダクトとして、「Musubi Bag(ムスビバッグ)」があります。日本の着物の帯からインスピレーションを受けたツイストノットのバッグで、ロゴも装飾もない外観でありながら、その形だけでAcneのバッグだと認識される独自性があります。

サステナビリティの面では、リサイクルウール・オーガニックコットン・生分解性レザー代替素材を積極的に採用。デジタルデザインツールとAIを活用して廃棄物を削減し、精度を高める製造プロセスを導入しています。

④ By Malene Birger(バイ マレーネ ビルガー):長命性を設計に込める

By Malene Birgerは、2003年、デンマークのデザイナーのマレーネ・ビルガーがコペンハーゲンで創業しました。彼女はデンマーク・デザイン・アワード(2002年)・Guldknappen賞(2004年)を受賞し、「コペンハーゲンのファッションクイーン」と呼ばれるまでになりました。

ねここ
ねここ

マレーネ本人は2014年にブランドを離れた。だけど、ブランドはその後も創業時の哲学を受け継いでいるんだよな。

By Malene Birgerのデザイン哲学は公式に明文化されています。

By Malene Birgerは、洗練されたスカンジナビアンミニマリズムと、意図的で高品位なデザイン精神で定義されるウィメンズウェアのブランドです。誠実さに導かれ、意図を持って設計されたコレクションは、longevity(長命性)を念頭に作られています。上質な素材・フェミニンなディテール・時代を超えるシルエットが、贅沢な実用性の感覚を語ります。

— By Malene Birger公式LinkedIn

longevity(長命性)を念頭に作る」という言葉は、北欧デザインの特徴でもある「捨てなくていいものを作る」というコンセプトでもあります。

筆者
筆者

流行のサイクルに乗らず、長く愛せて、長く着ることができることを条件に設計する。ファッション業界において、このコンセプトを主張することは簡単ではないのではないでしょうか。

一方で、こうした主張がBy Malene Birgerのブランド価値を高め、他ブランドとの差別化になっていることも事実。美しく安価なものが溢れる昨今で、ブランド自身がこうした主張を行うことで、ファッションを楽しむ人の消費意識に語りかけている感じもします。

⑤ Tomorrow Denim(トゥモロー デニム):美しさと倫理は両立できるという証明

Tomorrow Denimは、2018年、コペンハーゲンでアンリエッタ・ピェシャクが創業したデニムブランドです。世界で初めて、北欧エコラベル(Nordic Swan Ecolabel)EUエコラベルの両方を取得したデニムブランドとして知られています。

筆者
筆者

北欧エコラベル(Nordic Swan Ecolabel)とEUエコラベルは、製品が環境に優しい方法で作られていることを保証する認証制度。デニムは染色や加工で大量の水と化学物質を使うため、認証の取得が特に難しい分野とされています。Tomorrow Denimはこの2つを世界で初めて同時に取得し、デニムの作り方そのものを見直したブランドです。

彼女は2007年に自身のブランド「PIESZAK」をデニム専門ブランドとして立ち上げており、職人技と完璧に構築されたジーンズに焦点を当てていました。2016年には姉妹ブランド「IVY Copenhagen」も誕生しています。Tomorrow Denimは、彼女が手がける3つ目のデニムブランドです。

a stack of jeans sitting on top of each other


デニム産業は、ファッション業界の中で最も環境負荷が高いカテゴリのひとつです。大量の水を消費し、有害な染料・化学物質を使い、劣悪な労働環境が問題になることも多いという事実があります。Tomorrow Denimはこれを真正面から受け止め、サプライチェーン(製品の原材料調達から製造・販売までの全工程)全体の透明性を担保することを目標としています。

私たちのミッションはシンプルです。素晴らしいスタイルとサステナブルなマインドセットは両立できると証明することです

— Tomorrow Denim公式サイト

素材は100%オーガニックコットン・リサイクルコットン・リサイクルポリエステルを使用。取引する工場は1社に絞り、デンマーク本社からスタッフを現地に常駐させることで、労働環境と品質を直接管理しています。その工場では女性の雇用と管理職への昇進を積極的に支援しています。

ねねこ
ねねこ

デザインの方向性はデザインの方向性は北欧らしい普遍的な形をしてる。「男 or 女らしい形」に左右されず、無理して体を押し込む必要もない。デザインで人を選別しないシルエットね。
「倫理的であることとスタイリッシュであることは矛盾しない」というメッセージも感じるわ。

北欧ブランドのコンセプトは、長く愛されることを証明している

北欧ブランドには、サステナビリティの文脈で共通認識があるようなのです。すなわち、「私たちを取り巻く自然環境があってこそファッションやものづくりができる」という前提。とりわけ流行に左右されやすいファッションデザインにおいて、「今だけ着られる(使われる)ものは作らない」という姿勢を表明していることが、北欧デザインが北欧デザインたる所以なのかもしれません。

筆者
筆者

いわば、「思想を売っている」。こうしたメッセージは娯楽の側面が強いファッションの文脈で向き合うのに抵抗がある問題であり、またブランド側も、有言実行をするには難しさもある。

しかしこうした表明を通して、私たちの消費活動に一石を投じ、ものを得ることに対して考えさせるブランドであることは間違いないでしょう。
生活を豊かにした、その先。私たちは何を選び、どう使っていきたいか各ブランドのデザイン理念が、忘れてはいけない視点に気づかせてくれたような気がします。

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【北欧デザイン⑦】雨具がファッションになる|Marimekko・Rains・Acne Studios・By Malene Birger・Tomorrow Denim|北欧5ブランドのコンセプトが教えてくれるもの

お読みいただきありがとうございました!

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キュレーター
よいものを見つけたら飛びつく猫🐱 デザイナーをしながら、ずっとキュレーターという仕事に憧れていた。アナログガジェット、クリエイターツール、フリーランスの仕事術。自分らしく生きたい人に向けて執筆中。
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